【組織の成長】「やさしい経営になったよね」あすなろ歯科 野村先生

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群馬県前橋市 あすなろ歯科 野村英孝 院長

ご自身の尽力はもちろん外部のコンサルタントの力を借りるなど良い医院づくりに余念が無く、とても優秀な先生の医院が抱えていた問題とは?

群馬県前橋市にある「あすなろ歯科」の院長 野村英孝先生に話を伺いました。

空回りする想い

私は周囲に誤解されやすいタイプだと思います。

スタッフの話を聞くことは決して苦手ではないのですが、「こうしたい」「ああして欲しい」という想いが前に出すぎて熱くなります。
「人はやればできるようになる」と考えていたため、いくら伝えても期待するパフォーマンスが出せないスタッフに物足りなさを感じていました。
また、ミーティングなどでもスタッフ側から意見が出てくることがなく自発性が無いとも思っていました。

しかし、それは私のエゴともいえます。
スタッフの人生や成長のためにと愛情を込めて厳しいことも伝えるのですが、それが正しく伝わるかどうかは受け取り手次第です。
自分自身の傾聴が不足している場合もあれば、スタッフの敬意が不足している場合もあるでしょう。
両者に問題があり、お互い様だということに気づいていませんでした。

群馬県前橋市 あすなろ歯科 野村英孝 院長

ラットレース状態

スタッフは常にタスクに追われていました。
タスクの量もさることながら、マーケティングや自費診療の観点、ISOなどのルール遵守の観点など、内容も多岐に渡っていました。

みんな溺れながらも何とか食らいついていこうと必死でした。
当然、タスクの背景や目的を理解する暇などありません。
それでも、そのタスクを初めて担当することになったスタッフの中には背景や目的を理解していた人がいたかもしれません。
しかし担当者が入れ替わったとたん、単なる作業になり形骸化したのです。
当時の私はそのことに気づいていませんでした。

背景や目的の分からないタスクを上からの指示で「やらされている」スタッフのモチベーションが上がるはずもありません。
当然パフォーマンスも悪く、「なんでそんな事もできないんだ」と思っていました。

新井さんとの出会い

初めてジル(注:新井の愛称)にお会いしたのは15~16年前だったと思います。
Warai兄弟社を立ち上げる前で、歯科医院向けの販促ツールを販売する会社の営業マンとして来られました。
いかにも若者といった感じの見た目とは裏腹に、話す内容は的確で好印象でした。
当院を見て「院内が伝えたい情報で溢れています。子供向け・妊婦さん向け・高齢者向けなど、多すぎて逆に伝わりづらいので整理したほうがいいです。」と、客観的な目線で的確なアドバイスをしてくれた記憶があります。

ちょうど何か良い研修ないかな?と探しているタイミングでジルに相談したら、ジルから「ラグビーのチームワークを体感できるスポーツ体感型アクティビティ研修」を始めたのでどうですか?という提案をもらって興味をもち、その年は伊香保温泉への慰安旅行のスケジュールにチームビルディングを組み込んで実施しました。そこから毎年実施してます。

あすなろ歯科のオアシス

ジルが事務作業をしている時は医院の2階の部屋にいるのですが、スタッフが自ら話をしに行くんです。
少し会話するだけでもモヤモヤが解消されるようです。

ジルがスタッフの話に耳を傾けているのを横で見るときがありますが、答えの出ないような話でも延々と聞き続けることは私にはできないと思いました。
スタッフの意見に肯定や否定をしてしまうと肯定的な事しか話さなくなるため、まずはどんな話でも聞くそうです。

また、現状を把握したりそれぞれのキャラクターを知ったりするため、スタッフ全員と分け隔てなく会話します。
それは私に対してもそうで、心を整えてもらっている気がします。

「~したい」を引き出す

「やりたいならやればいい、どんなに小さなことでも取り組むことに意味がある」とジルは言います。
アイディアを温めているうちは、理想に近づいているような錯覚に陥るだけで一歩も前進していません。
最初は理想から遠くても、やっているうちに精度が上がり、やがて理想に近づくのです。

「学会の認定を取りたい」「楽しく働きたい」「給料アップしたい」など、個人の「~したい」をジルは応援してくれます。

「~したい」というスタッフの背中を押してくれます。
そして、何があっても大丈夫だという安心感も伝えてくれます。

そして、 内容や結果はどうあれ挑戦した姿勢を認めてくれます。
たとえ周囲から見ればできて当たり前のことだったとしても、本人にとっては大きな挑戦だからです。

「~したい」という目標に向かって行動しながら通常業務も同時に行うわけですから、やることは増えています。
しかし、仕事のパフォーマンスは下がるどころか向上していると感じるようになりました。

群馬県前橋市 あすなろ歯科 野村英孝 院長

スタッフに要求しなくなったら、スタッフが勝手に動き出した

不思議なことに、今までは講演を聞いても「いいですね」で終わっていたスタッフが「やってみたい」と言い出すようになりました。
そして、その「やってみたい」の一つであった職員さん向けの講演会をスタッフ自らが企画し、実現するまでに至ったのです。
あすなろ歯科が「単なる歯科医院」から「地域の健康拠点」に近づいた瞬間でした。

私やコンサルタントなどの他人から指示されたことが長続きしないのは、スタッフ自身の「~したい」になっていないから。
私の「~して欲しい」とスタッフの「~したい」が一致すれば、人は指示されなくても勝手に動き出すことに気づきました。

スタッフそれぞれの「~したい」にスタッフ自らが取り組み、小さな成功体験を積み重ねることが、組織の原動力に繋がっている気がします。

群馬県前橋市 あすなろ歯科 野村英孝 院長

「野村英孝のチーム」から「あすなろ歯科というチーム」に

「医療連携がやりたい」といったような「~したい」という様々な価値観がスタッフの中から生まれ始めたとき、歯科医師という職人でいたい私と医院を拡大する経営者にならなければいけないという私が対立し、葛藤がありました。

しかしその時もジルとのセッションで、私の「~したい」とスタッフの「~したい」の両方が実現できる方法を考えればいいと思えるようになり、一人一人の想いを重ね合わせることでより強いチームになるイメージがもてるようになりました。もう、「あすなろ歯科」は私だけのものではないのです。

歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・受付などの役割に上下関係はなく、それぞれの得意領域でパフォーマンスを発揮する組織を理想として目指してきましたが、それがようやく形になってきた気がします。

「やさしい経営になったよね」

先日、古くから当院の内情を知る人に「やさしい経営になったよね」と言われました。
私を含めた一人ひとりがみんなのために向き合い、強い個人になっていきました。
そしてみんなが一致団結し、強い組織になっていきました。
強い組織は個人のパフォーマンスを引き上げてさらに強くしていきます。

ジル以外の方にコンサルティングを依頼しても、最終的には同じゴールに辿り着いていたかもしれません。
しかし、そこに至る過程で多くの気づきを得ることができました。
ジルは、すぐに魚を与えるのではなく、時間をかけて魚の釣り方を教えてくれたのです。
ここまで来るのに時間はかかりましたが、結果的には最短距離を走ってきた感覚です。

すぐに成果を出したい先生に、ジルのやり方は合わないかもしれません。
しかし、時間をかけて強い個人と強い組織を作り上げ、それを成果に結びつけたい先生には、ぜひご紹介したいと思っています。

群馬県前橋市 あすなろ歯科 野村英孝 院長